心理カウンセラーは、今後AIが普及しても「消えない仕事」といわれています。
人の心・気持ちは1つではないですし、パターン化も厳密にはできませんよね。これからもさまざまな就職先で心理カウンセラーは求められるでしょう。
しかし、「就職先ってどんなところがあるの?」「仕事内容は?」と思う人も少なくありません。そこで今回は、心理カウンセラーの就職先や具体的な仕事内容を解説します。
心理カウンセラーの働き方や就職先は、大きく分けて7つの領域があります。
病院やクリニックは心理カウンセラーの主な就職先の1つです。
就職する科は精神科もしくは心療内科が多いですが、ほかにも次のような診療科や医療機関で働くカウンセラーもいます。
・小児科
・産婦人科、婦人科
・がん医療センター
主に臨床心理士や公認心理師資格が必要な領域です。仕事内容は、アセスメント(検査や面接)、個人療法や集団療法などがあります。
心理職の福祉分野の就職先は、次のようなところがあります。
・高齢者福祉施設
・精神保健福祉センター
・児童相談所
・心身障害者福祉センター
・リハビリテーションセンター
・児童発達支援事業所、放課後等デイサービス
相談内容は、それぞれの施設を利用する対象者によって異なりますが「DV」「虐待」「ハラスメント」「認知症」「家族支援」などがメインです。
児童発達支援事業所や放課後等デイサービスは、療育といって相談支援ではない関わり方が主な仕事となります。
臨床心理士や公認心理師資格が必要なところもあれば、児童福祉の分野であれば「児童心理司(公務員試験必須)」や「児童指導員」の資格で就職できる施設もあります。
学校(小学校、中学校、高等学校、特別支援学校)のスクールカウンセラーや、大学の学生相談室、自治体の教育相談機関などが主な就職先です。
ほかにも、教育委員会や外部機関の委託などで巡回相談や就学相談、WISCなどの心理検査を行っている人もいます。
就職先によって必要資格はそれぞれ異なりますが、埼玉県などに設置されているさわやか相談員は資格がなくても応募できます。また、適応指導教室は教員免許所有者の方が多いといわれているため、大学で教員免許を取得して就職する人もいるようです。
そのほか、学校心理士や臨床発達心理士、認定心理士、チャイルド心理カウンセラーなどの資格を持つ人もいます。
一般企業の相談室やハローワーク、健康管理センターのほか、以下の就職先もあります。
・人材派遣会社
・EAP機関
・障害者職業センター
・就労支援機関
・就労移行支援事業所など
所有しておくと就職に有利な資格は、臨床心理士や公認心理師のほか、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントなどが該当します。
企業によっては、大学で心理学を学んでいた人や人事に関わっていた人などを「キャリアカウンセラー」「派遣コーディネーター」「キャリアアドバイザー」として採用するところもあるようです。
刑務所や少年院、家庭裁判所、少年鑑別所が主な就職先です。
すべて行政機関となるため、公務員(法務技官など)の募集となっています。
医療分野と同様に、アセスメント(検査)が主な仕事ですが、法律の知識や論理的思考で法律の専門家が納得できる所見を書く必要があります。
「心理学者」として大学や研究センターなどの研究機関に所属します。
心理カウンセラーとは働き方が異なりますが、なかには学生相談室と兼務する人や学生の指導をする人もいます。
教授や准教授、講師として教壇に立つ心理学者もいるようです。
ほかにも、講演活動や執筆、企業や学校へのアドバイスなどを行う心理学者もいます。
6つの分野に該当しない就職先や働き方が、「そのほかの分野」に当てはまります。
たとえば次の働き方が、近年注目されている心理カウンセラーの仕事です。
・私設のカウンセリングルーム
・オンラインカウンセリングサービス
・電話相談、SNS相談
・フリーランスカウンセラー
・医療系ライター
そのほかの分野は、1つの仕事をするよりも副業やパラレルキャリアとして活躍している心理カウンセラーが多いとされています。
各分野の就職先でも仕事内容は触れましたが、さらに詳しく解説します。
医療福祉分野の中でも、病院やクリニックの心理カウンセラーの仕事内容は以下の通りです。病院やクリニックの規模によって異なります。
また、外来担当と病棟担当、デイケア担当などと分けるところもあるようです。
・心理検査
・カウンセリング、個別療法
・インテーク面接
・デイケア
・集団療法
・多職種連携
・研修活動
心理カウンセラーが主に連携する職種は医師ですが、看護師や精神保健福祉士・社会福祉士、作業療法士、言語聴覚士、理学療法士など多職種と連携することもあります。
多職種連携は、1人の患者の支援について話し合うこともあれば、病棟全体やプログラムについて話し合う場合など、さまざまな形で連携します。
高齢者施設での心理カウンセラーの役割はストレス要因の探索や、症状緩和、認知機能維持のためのケアなどがあります。
そのほかにも、高齢者ご本人だけでなく、家族や関係者(医師、看護師、ケアマネジャー、リハビリ職など)との連携や支援も仕事の1つです。
児童相談所の心理カウンセラーの主な役割は、アウトリーチ活動や虐待相談、育成相談、障害者相談などがあります。アウトリーチとは、対象者のところへ出向いて情報提供や支援をすることです。
心理カウンセラーのイメージと言えば、カウンセリングルームのなかで相談や検査対応をすることが挙げられますが、近年は積極的に自宅や施設、学校などを訪問することも増えました。
スクールカウンセラーの記事で詳しく説明していますが、学校の心理カウンセラーには次の7つの役割があります。
①児童生徒のカウンセリング
②保護者対応(相談援助)
③教員へのコンサルテーション
④教職員のメンタルヘルスサポート
⑤生徒や教師、地域への講演や研修
⑥予防対応
⑦心理検査など
カウンセリング以外にも、アドバイスや研修などを行うのはスクールカウンセラーならではの働き方の1つでしょう。
事業規模にもよりますが、企業内に相談室やカウンセリングルームを設置しているところもあります。一般企業の心理カウンセラーは、企業の内側から、従業員のストレスマネジメントや労働環境調整を行うのが主な役割です。
スクールカウンセラーのように、予防のための研修なども行う心理カウンセラーも増えてきました。人事などと協力しながらメンタルサポートと働きやすい環境を整えるのが主な仕事となっています。
家庭裁判所に就職する場合は、家庭裁判所調査官という国家公務員として働きます。
資格を取得しなくても、公務員試験に合格して2年間研修を受ければ家庭裁判所調査官になれるので、臨床心理士や公認心理師の資格を取得する必要はありません。ただし、試験科目に心理学や教育学が含まれるため、心理学を何も知らないまま受験することは難しいでしょう。
家庭裁判所調査官の主な仕事は、家庭内の問題解決に向けた子どもの面談や、非行少年の調査と調整です。当事者や子どもたちに最もよい解決方法の検討のために、話を伺いながら関係機関と連携したり調整を行っていきます。
私設のカウンセリングルームやオンラインカウンセリングサービスに就職した場合の主な仕事は「カウンセリング」です。
施設規模や事業内容によっては、心理検査を行うことはありますが、基本的にはカウンセリングのみとなります。
カウンセリングルームの場合、精神疾患を持つ人だけでなく、キャリアや恋愛などさまざまな悩みを抱えた人達も訪れるでしょう。なかには「認知行動療法の経験者歓迎」という、扱う心理療法が限定されている求人もあります。
ここまで紹介した就職先は、どのように見つければいいのでしょうか。
この項目では、求人の探し方を解説します。
心理カウンセラーの求人は、営業職や販売、事務などと比べると多くはありません。
しかし、次の求人サイトでも心理カウンセラーの募集は行われています。
・indeed(インディード)
・求人ボックス
・エンゲージ
・ジョブメドレー
・ママワークス
・コメディカルドットコム
・スタンバイ
・テンプスタッフ
「心理カウンセラー」と入力して検索すると、教師や講師、支援員など異なる職種も出てくるので、ほかのキーワードも加えるなどして探してみましょう。
病院やクリニック、児童福祉施設、教育委員会、一般企業など、就職先候補の公式サイトにアクセスする方法もあります。
必ず募集しているわけではないですが、先ほど紹介した求人サイトを利用せずに募集しているケースもあるようです。
また、募集していなくても連絡してみることで面接の機会をもらえるケースはあります。働きたい場所があるなら、自分の手で就職先にしてしまいましょう。
心理学関連の学会に所属することで、その学会会員限定で閲覧できる求人を見られます。
ただし、入会条件の中には「臨床心理士や公認心理師の資格を有する人」「心理学関連の大学や大学院を卒業している人」「学会会員の推薦者」というものもあるので、誰でも入会できるわけではありません。
そのほか、心理学に関する情報提供をしているサイトやX(旧Twitter)で募集していることもあります。
大学院進学者の多くは、大学院や先輩、研修先、教授などの紹介で就職先を決定しています。
これまで紹介した3つの方法で就職する人もいますが、紹介だと求人広告を出す前に声がかかったり、条件が良い場合もあるのです。
横と縦のつながりを大事にすることで、就職先が決まる可能性もあるのは、心理カウンセラーの業界ならではでしょう。
「心理カウンセラー 就職先」と検索すると、「ない」「意味ない」などという結果が出てくることもあります。
実際は、心理カウンセラーの需要は年々高まっているので、探せば仕事は見つかります。需要が高まっている理由は以下の4つです。
1.ストレス社会でメンタル不調の相談は増加
2.スクールカウンセラーの配置推進
3.企業の相談窓口の義務化推進
4.欧米の影響によるカウンセリング浸透率の増加
それぞれ詳しく解説します。
日本は他国と比較して、ストレス社会と呼ばれています。ヨーロッパやアメリカは仕事とプライベートをわけていることが多く、日本人の働き方は悪くはないですが「真面目」「仕事人間」といわれているようです。
そのような背景から、日本人はメンタル不調者が年々増加しており、相談件数も右肩上がり。ストレスケアやメンタルケアを担ってくれるカウンセラーは、多くの人間や企業・組織に求められています。
子どもの心の悩みに対応するべく、スクールカウンセラーの配置も増加しています。
文部科学省の調査によると、今から約10年前(2013年/平成25年)のスクールカウンセラー配置校数は20,310校でした。さらにさかのぼると、2003年(平成15年)のスクールカウンセラー配置校数は6,941校と2003年〜2013年の間だけでも増加していることがわかります。
そして、最新の調査報告によれば令和2年のスクールカウンセラー配置校数は29,939校となりました。10年前と比べて約1万校でスクールカウンセラーが配置されていることがわかります。
参考:
スクールカウンセラー等活用事業に関するQ&A|文部科学省
スクールカウンセラーだけでなく、企業においても産業カウンセラーなどの配置を行うところが増加しています。
厚生労働省の調査によると、令和4年時点でメンタルヘルス対策に取り組む事業の割合は63.4%と半数を超えていることがわかりあmした。
事業規模別にみると、従業員が50名以上いる事業所の導入は90%を超えているそうです。厚生労働省は、2027年までに全体で80%以上を目指しているため、今後も増加していくことでしょう。課題としては、ストレスチェックの実施が努力義務である労働者50人未満の事業所に対する対策と、ストレスチェックの認知度がまだ低いことにあるようです。
参考:
職場におけるメンタルヘルス対策の現状等|厚生労働省
欧米ではカウンセリングを利用した経験のある人が52%と半数を超えています。
一方、日本でカウンセリングを利用した経験のある人はわずか6%程度。身体症状なら病院へ行くけど、心の場合は「甘え」「我慢しろ」と同調圧力などによって自分や他者を追い込む傾向があると指摘されています。
そのほかにも、「自分よりももっと辛い人はいる」「メンタルが弱いと思われたくない」という気持ちも、カウンセリングや心療内科受診へのハードルをあげているようです。
しかし、近年一般の方にも浸透してきた「認知行動療法」や「マインドフルネス」は、もともと欧米で開発された方法。日本でも応用できるように、心理学者などが試行錯誤して普及するようになりました。
今後も、欧米のいい影響を受けて、日本人のためのストレス対策は各分野で取り組まれていくでしょう。
参考:
一般社団法人カウンセリング・キャリア推進協会 | カウンセラー育成とメンタルヘルス普及の総合案内
心理カウンセラーとして就職先を探す際、よく多くの人が感じる悩みを3つ紹介します。
解決策も合わせて紹介しているので、参考にしてみてください。
心理カウンセラーの求人は、非常勤やパートタイムの方が多いようです。
正社員希望で働きたくても、就職先によっては正社員募集をしていないことがあります。
その背景の1つには、スクールカウンセラーなど自治体が募集している求人の多くは週1~3日と非常勤採用が多く、掛け持ちで働く心理カウンセラーが多いことが理由と考えられます。
勤務先にこだわらず正社員を目指したい人は、株式会社もしくはクリニックの求人がおすすめです。
株式会社の正社員とは、今回「2-4.一般企業」で紹介したものだけではなく、株式会社が運営する児童発達支援事業所や放課後等デイサービス、子育て相談支援などが含まれます。社会福祉法人や非営利活動法人も募集していますが、場所によっては若干年収が低い傾向があります。
就職先によっては、以下の資格のいずれかが必要となります。
・臨床心理士
・公認心理師
・精神保健福祉士
・社会福祉士
・産業カウンセラー
・キャリアコンサルタント
・公務員の心理職
自分自身がどんなところを就職先としたいのか、あらかじめ考えておくことで必要な資格がわかります。
病院や教育機関、司法領域を希望していない人は、上記以外の資格でも働ける可能性はあるでしょう。
一般的な就職と心理カウンセラーの就職の大きな違いは、枠が少ないことです。
一般的には、毎年新卒や中途採用者を募集している会社が多いでしょう。一方、心理カウンセラーの就職先は1つの事業所に対して1~5名程度の正社員と非常勤数名の構成となっています。
カウンセリングの部屋がたくさんあるわけでもないので、たとえばクリニックなら非常勤は週1しか募集していないところもあり、毎日違うカウンセラーがいることもあります。
つまり、現在いる人が辞めない限りは新人を雇わない傾向があるのです。第1希望を今のうちに決めずに、複数の就職先を検討することをおすすめします。
SNSやインターネットの活用が当たり前になった現在、心理カウンセラーの新しい就職先として3つの場所が増えました。
SNS相談員(SNSカウンセラー)とは、LINEやチャットアプリなどを用いて、文字でカウンセリングを行う仕事です。
就職先としては、SNSカウンセラーを募集している株式会社などがあります。
SNSカウンセラーは、「一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会」が認定する資格登録制度で「SNSカウンセラー」の資格を取る方法が一般的ですが、次の方法もあります。
・すでに持っているカウンセラー資格を活かして就職する
・研修制度が整っている企業に就職する
・ココナラなど、プラットフォームでサービスを作る
SNSカウンセラー養成講座は約10時間のカリキュラムなので、ほかの心理カウンセラー(メンタル士心理カウンセラーⓇなど)の資格と合わせてWで資格を所有しておくと活動の幅が広がります。
フリーランスカウンセラーとは、業務委託やクラウドソーシングサービスで仕事を獲得する働き方です。
「就職先」とは少し違いますが、働き方としては近年人気の選択肢となっています。
業務委託の働き方は、企業や個人事業主から依頼を受けて働く形のこと。現在、企業やクリニックなどで業務委託を募集しているところが増えています。
クラウドソーシングサービスとは、ネット上で自分の持つスキルを売る人と買う人を繋げるプラットフォームのことです。カウンセリングもスキルの1つとして販売している人もいます。
ある程度の経験を積んだ心理カウンセラーや独立に対して意欲のある人は、独立開業している方も多いです。
自宅の一部屋を使う人もいれば、マンションを借りたり、レンタルスペースやテナントを借りる心理カウンセラーもいます。近年は、フリーランスの働き方を活用してオンラインのみで開業している人も増えてるようです。
ただし、独立開業したりフリーランスで活動する場合は、自分で事業計画を立てたり、宣伝・集客・営業を行う必要があります。
心理カウンセラーの就職先は、想像以上に幅広かったのではないでしょうか?
今回紹介した就職先は、臨床心理士や公認心理師の資格を取得する必要がある場所もあれば、そうではない就職先もあります。
特に未経験・無資格の人が応募可能な事業所や「6.近年増加中!心理カウンセラーの新たな就職先」で紹介した働き方は、民間の心理カウンセラー資格でも活動可能です。
ほかの記事ではおすすめの民間資格や通信講座も紹介しています。この記事含め、当サイトを参考に、自分に合う就職先を見つけてくださいね。
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