心理カウンセラーは、高校生の進路だけでなく、社会人や主婦の方のセカンドキャリアとしても人気の仕事です。
相手の悩みを聴き、解決に導くことがやりがいや魅力ですが、なかには「きつい」という声も聞きます。
そこで今回は、心理カウンセラーの仕事がなぜきついといわれるのか、やりがいや魅力も合わせて紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
心理カウンセラーとは、やりがいのある仕事ですが、きついともいわれています。
その理由は次の5つの点にあると考えられるでしょう。
心理カウンセラーの仕事は、悩みや不安を抱えている人の相談に応じること。
相談者(クライアント、クライエントともいう)はネガティブ感情やモヤモヤした気持ちを持つ方が多く、カウンセラー自身のメンタルが安定していないとダイレクトに感情を受け取ってしまうことがあります。
また、メンタルだけでなく健康状態もある程度安定していないと、免疫力低下からストレスを抱えやすくなるでしょう。心理カウンセラー自身の状態によっては、メンタルが落ちることがあるのがきついといわれる理由の1つです。
自分自身の感情のコントロールは、心理カウンセラーにとって重要な仕事。
「1-1.メンタルが落ちることがある」とも関連がありますが、相談者の話に寄り添うことと、同情しすぎて感情が巻き込まれるのは違います。巻き込まれないよう、集中して話を聴く必要があるのも、心理カウンセラーの仕事がきついといわれる理由でしょう。
別の記事で詳しく解説しましたが、心理カウンセラーの求人は非常勤が多いといわれています。
組み合わせ次第では安定した収入を得られますが、地域や施設によっては専門職なのに時給が安いところも多いそうです。
特に、医療や福祉の心理カウンセラーの収入はあまり高い方ではありません。心理カウンセラーのなかで比較的収入が高いのは、司法分野と産業分野。また、スクールカウンセラーも時給は高いので、ほかの職場との組み合わせで高収入を得られます。
フリーランスや起業して働く場合も、収入が不安定になりやすいので、きついといわれるのでしょう。
心理カウンセラーは資格を取得したり、ただ話を聴くだけで終わりではありません。
相手の相談に対応できるよう、日々勉強していく必要があります。
特に臨床心理士は5年更新の資格であり、資格更新のためにポイントをためなくてはいけません。ポイントは、セミナーや勉強会、学会の参加などでためていくのですが、参加費用が1回あたり5,000〜20,000円くらいなので、給料の割に支出が多くなる人もいます。
心理カウンセラーは、守秘義務を守ることが当然となります。
社会で働いていると、普段職場で感じたことを家族や恋人、友達などに話したくなることもありますよね。しかし、心理カウンセラーは相談者の個人情報を話すわけにはいきません。
悩んでいることや感じたことを、自分で解決する必要が出てきます。ただし、スーパーバイズ(SV)といって先輩カウンセラーに相談できる制度もありますので、臨床心理士や公認心理師はその制度を活用している人はいます。
カウンセラーにとって大変なことは、相談者のための冷静な判断力と、寄り添う姿勢のバランスを取ることです。
カウンセリングは、寄り添うだけで解決するものではありません。
しかし、寄り添うことをやめてしまっては、相談者が話しにくくなったり、二重の傷つきを感じることになってしまいます。
「どんな声かけをするか」
「どのように質問するか」
「どんなタイミングで相槌を打つか」
これらはすべて、普通に会話するときと異なり、しっかり考えながら行う必要があります。
先ほど紹介した「きついと感じること」と合わせて、バランスを取って話を聴くことは大変だと感じやすいでしょう。
きついと感じる人もいる心理カウンセラーの仕事ですが、やりがいや魅力も数多くあります。
カウンセリングに来る人のなかには、誰にもこれまで話せなかったことや、言いにくいことを勇気をもって話してくれる場合があります。
「ありがとう」という直接的な言葉はなくても、相談者が安心や安堵を感じている様子は伝わってくるでしょう。
その瞬間、「人の役に立てた」と感じるのは心理カウンセラーにとってやりがいの1つです。
カウンセリングのニーズはさまざまですが、変わりたい気持ちや解決したい思いを持ってくる人が多いです。
相談者の成長や変化していく姿を見られることは心理カウンセラーの喜びとなるでしょう。
たとえばこのような時に喜びを感じるそうです。
・仕事を辞めたくても怖くてやめられない人が、退職を決意できた
・パートナーと関係が悪くなっていた人が、関係改善に至った
・転職活動が上手くいかなくて自信を無くしていた人の就職が決まった
・毒親に悩まされていた人が、自分らしさを手に入れた
カウンセリングは「関係を修復する、状態を改善する」ことだけがすべてではありません。相談者が生きやすい人生になる過程が成長や変化となります。
相談者の話を聴いているうちに、自分の課題に直面するカウンセラーもいます。
心理カウンセラーがきついと感じる出来事でもありますが、カウンセラー自身が乗り越えることで、自己成長にもつながるでしょう。
ただし、重ね合わせてしまって、プロ意識がなくならないように気をつけてくださいね。
病院で求められる心理カウンセラーの仕事と、企業で求められる心理カウンセラーの仕事は細かく見ると異なります。
1つの分野を極めたい人も、たとえばA病院の業務内容とBクリニックの業務内容が異なることもあるでしょう。
働く場所によって仕事内容が変わるのは、大変と感じる人もいますが、魅力の1つでもあります。さまざまな経験ができるので、自己成長にもつながりますよ。
心理カウンセラーの仕事は、独立することも可能です。
インターネットが普及している現在、オンラインカウンセリングも当たり前となってきました。
以前は、「独立=対面カウンセリングルームをつくる」でしたが、対面サービスをつくらない心理カウンセラーも増えています。独立できることも、心理カウンセラーの魅力の1つでしょう。
心理カウンセラーの仕事はAIが変わることはできません。
プログラムを組んで、その通りに実行することは可能ですが、人の気持ちをテーマにするのが心理カウンセラーの仕事ですよね。
AIでは替えが効かないことも、心理カウンセラーのやりがいや魅力といえます。
「1-3.収入が不安定な人もいる」で触れたように、給料・収入面できついと感じる人もいるといわれています。
臨床心理士や公認心理師は、近年常勤の求人も増えていますが、もともとは非常勤求人の多い職種です。
理由は、おそらくスクールカウンセラーが非常勤であることや、色んな分野を掛け持ちしたい人も多いからと考えられます。
非常勤の給料は分野だけでなく、施設や企業ごとに異なるようです。
心理カウンセラーの時給の平均は1600円程度。東京都の求人は2000円以上も増えてきましたが、最低賃金と大差がない施設もあります。
また、心理カウンセラーは大量募集をするような職種ではないため、去年募集していた企業や施設が来年も募集しているとは限らないのもきついといわれる理由かもしれません。
所有している資格によっても給料が異なる場合があります。
・公認心理師や臨床心理士
平均年収は、常勤が350〜450万円程度といわれ、月給平均は25万前後とされています。
臨床心理士の平均年収は300〜400万円ともいわれているので、ダブルライセンスが有利となるでしょう。
・産業カウンセラー
平均収入は月21〜27万円程度。ほかの資格とあわせたり、大企業などに就職できれば臨床心理士や公認心理師よりも高い給料が見込めるでしょう。
・メンタル士心理カウンセラー
上記の資格と異なり、フリーランスや起業で働く人が多い資格です。
見込まれる収入は、数万円〜1000万円以上といわれ、働き方や工夫次第で高収入を目指せるといわれています。
いくらやりがいや魅力があっても「きつい」「大変」と聞くと、心理カウンセラーになるか迷いますよね。
そこで、この項目ではきついと感じにくくなるための方法を紹介します。
スーパーバイズ(SV)の話は先述しましたが、SV以外に「教育分析」という方法があります。
教育分析とは、臨床心理士や心理カウンセラー含む対人援助職が、訓練の1つとしてプロカウンセラーのカウンセリングを受ける方法のことを言います。
さまざまな心理療法を体験できる機会でもあり、自己理解が深まる時間ともなるでしょう。
教育分析は臨床心理士じゃなくても受けられますが、教育分析という名称ではなくてもプロカウンセラーのカウンセリングを受けてみてもいいかもしれません。
給料・収入面のストレスを解決するなら、給料のいい職場に就職するのが近道。
仕事内容がハードとなる場合もありますが、給料面の不安は解決されるでしょう。
または、今の仕事に加えて副業でオンラインカウンセリングを行ったり、副業ではなく独立して自分の裁量で金額を設定する方法もあります。
自己コントロールはできているけど、なんだかうまくいかない感じやきつさを感じている人は知識を増やしていきましょう。
セミナーや勉強会に参加したり、最新の書籍や論文を読んだりして、あらゆる相談に対応できるようにするのは相談者のためにもなります。また、心理カウンセラーは経験年数も大事ですが、それ以上にスキルや人間力が大切になります。
勉強しているだけでは、いざ相談者を目の前にしたときに対応できません。四苦八苦しながらも、相談者の話を聴く経験を増やし、自分に必要なスキルを高めていくことはきつさを和らげることにもつながります。
心理カウンセラーも人間です。体調不良になったり、悩むこともあるでしょう。
カウンセラーだからこそ、セルフケアやストレス対策は重要です。
ストレスがたまっているときに、相談者のネガティブなエネルギーをもらってしまうと、カウンセラー自身のメンタルが落ちる可能性があります。相談者と自分の心の安全のために、セルフケアとストレス対策を実践していきましょう。
きついこともあるけど、やりがいや魅力のある心理カウンセラー。
実際、どんな人が心理カウンセラーに向いているのでしょうか?
人への興味関心がないと、心理カウンセラーの仕事はきついと感じやすくなるでしょう。
カウンセリングは、自身が経験したことのない業界や環境の話を聴くことも多いです。知らないことや関わったことのないことでも、相手に関心を持って、丁寧に話を聴ける人は心理カウンセラーに向いています。
カウンセリングでは、相談者自身が何を言いたいかわかっていないことも多くあります。
悩みを抱えているとき、上手く言葉にできないのは当然ですよね。迷いや不安を抱えている相手に、答えを急かせたり、解決を急ごうとしてしまうことはカウンセラーとしてあるまじき行為。
相談者がさらなるストレスを抱えてしまうことにもなりかねません。心理カウンセラーは、相談者の話を根気強く聴く姿勢が重要となります。
共感して話を聴くことは、心理カウンセラーの基本姿勢ですが、同時に冷静な判断力も必要となります。
心理カウンセラーの共感とは、相談者の感情を自分も感じているかのように受けとる「共感的理解」が基本となりますが、巻き込まれない立場を忘れないことも重要となります。
巻き込まれない立場になるには、相談者が何を考えているか、どのような認知で物事を見ているか、冷静に見る必要があるでしょう。人に興味関心を持つだけでなく、冷静に判断する能力を持っている人は心理カウンセラーに向いています。
お金は大事ですが、「お金が第一ではない」という考えを持つ人もカウンセラーに向いています。
心理カウンセラーにとって、カウンセリングは提供するサービスですが、お金として認識しすぎてしまうと次のようなデメリットがあります。
・たくさん働こうとしすぎてしまう
・(フリーの場合)スキルに見合わない単価に設定してしまう
・稼ごうという気持ちが前面に出すぎてしまう
お金は大事ですが、お金が第一ではない人は心理カウンセラーに向いているでしょう。
心理カウンセラーにとって自己管理は重要な仕事の1つです。
気をつけていても、悩むことや風邪をひくことはありますが、気持ちのコントロールができると相談者にもいい影響を与える意味でも重要。
たとえばみなさんが相談者の立場だった場合、担当カウンセラーがネガティブ感情を持ちすぎた状態で質問してきたり、暗い表情をしていたらどう感じますか?
「大丈夫かな?」「なにかまずいこと言ったかな?」など、色々心配になりますよね。
相談者の心理状態は、とても敏感であることが多いです。カウンセラー側の状態が不安定では、相談者に余計なストレスをかけてしまうでしょう。
以上のことから、セルフコントロールできる人は心理カウンセラーに向いているといえます。
心理カウンセラーにとって、自己研鑽(勉強し続けること)は必要なことです。
スキル・能力を高めていくだけでなく、新しい知識を取得することで、考え方の視野も広がっていきます。
たとえば自己研鑽の方法には次のようなものが考えられるでしょう。
・自分の専門分野の研修やセミナーに参加する
・異なる分野の研修やワークショップに参加する
・専門分野の本を読む
・カウンセラー仲間や先輩とケース検討をする
・自分自身もカウンセリングやSVを受ける
相談者に対して、今よりも質の高いカウンセリングを提供したいと考えられる人は、心理カウンセラーに向いているといえます。
心理カウンセリングとは、相談者の人生に関わる重要な仕事です。
話を聴くだけのイメージでは、対応できないことも多いでしょう。特に次の特徴を持つ人は、カウンセラーには向いていないと考えられます。
向いていない可能性がある人の特徴は以下の通りです。
・自分の話をすることが好き
・相談者をコントロールしたい
・感情移入しやすい
・自信がない
・感謝の言葉を求めている
・アドバイスをしたい
共通する点は、相談者のためにならない行動をする可能性があること。
相談者の多くは、「自分の話を聞いてほしい」「問題を解決したい」と考えています。しかし、両方のニーズを持っている人もいれば、片方を目的としている人もいるでしょう。カウンセリングは、カウンセラー本位ではなく、相談者が主役で行なわれるものです。
じっくり話を聴いたり、共に解決策を探したり、必要に応じて提案や助言をしながら接することができない人は、カウンセラーに向いていないでしょう。
心理カウンセラーに向いていない特徴に当てはまった人は、まずカウンセリングを受けてみるといいかもしれません。
カウンセリングは、精神疾患の人や思い悩んでいる人だけのものではなく、さまざまな人が受けていいものです。
心理カウンセラーに向いていない特徴を克服することで、自身の暮らしも今より穏やかになるでしょう。仕事のためにも、自分自身のためにも、カウンセラーに向いているか自信のない人や不安のある人は、プロのカウンセリングを受けることをおすすめします。
最後に、実際カウンセリングの現場できついと感じるであろう場面の対処法を紹介します。
過去の経験をカウンセリングに活かすことは可能です。しかし、克服や回復しきっていない状態でカウンセラーの仕事を続けるのは困難でしょう。
きついかどうかの前に、公私混同してしまって質の高いカウンセリングを提供できないからです。
一方、「過去の自分と似ているな」「過去の自分もこうだったな」と感じること自体はダメではありません。その際、避けなければいけないことは次の3つとなります。
・自分が解決した方法で解決させようとする
・自分にできたから、相手にもできるだろうと考える
・自分が思っていたことを、相談者も思っているはずだと考える
つまり、目の前の相談者ではなく「過去の自分」を見てはいけないということ。あなたのカウンセリングを受けに来たのは、目の前の相談者であることを忘れずに、じっくり話を伺って共に解決策を考えていってください。
カウンセリングに来るのは、悲しみや不安を抱えている人だけではありません。
「相手が自分の言うことを聞いてくれない」という強い怒りのエネルギーを持っている人もいます。そのような人の場合、カウンセラーのこともコントロールしようとしてくることがあるのです。
また、不安や悲しみを抱えている人も「わかってほしい」「解決してほしい」という思いから、無意識に攻撃的な態度を取る人もいます。
どちらのパターンでも、まずは相手の話を聴くことは重要です。何か心理療法や対策方法を提案する場合も、関係性がある程度できてからの方がいいでしょう。カウンセリング場面では落ち着いて対応し、カウンセリング後にセルフケアや先輩カウンセラーに話を聴いてもらうなどして、対処していくことがおすすめです。
心理カウンセラーは、やりがいや魅力がある仕事です。
きついと感じる人もいますが、多くのカウンセラーはカウンセラーになる前に、解決させている人が多いでしょう。
もし、この記事を読んで不安になった人は心理学やカウンセリングの勉強をするだけでなく、自身もカウンセリングを受けて、自分の課題をクリアにしてみてくださいね。
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